親の介護には早めの準備が大切(前編)
「うちの親はまだ大丈夫」「そろそろ介護に備えておきたい」「最近心配なことがある」
人それぞれだと思いますが、「介護」というのは突然必要に迫られることがあります。何も準備していないとパニック状態に、なんてことも。親が一人暮らしや遠くに住んでいる、自分も兄弟姉妹も仕事をしている状況であれば、なおさら事前の備えが大切です。
現在、日本では高齢者の一人暮らしや高齢者世帯の日常生活への不安は増えています。それまで自立した暮らしを送っていた親が転倒で骨折したり、病気の発症をきっかけに介護が必要になるケースも多く見られます。突然親の介護に直面して慌ててしまうことのないように、できることから介護の準備をしておきましょう。
<介護の準備のポイント>
- 介護について親や家族で話し合っておく
- 介護に必要な費用を把握し、準備をしておく
- 介護保険制度や利用できるサービスについて知っておく
- 地域の相談窓口「地域包括支援センター」を知っておく
1.介護について親や家族で話し合っておく
「親の介護」は、介護する側の生活にも大きくかかわる問題です。いざ介護が必要になってから話し合うのでは、適切な判断やスムーズな対応ができない可能性もあります。親が元気なうちから、「どのような老後を送りたいのか」「要介護状態になったらどうするか」といった希望や考えを聞いておくことが大切です。
また、介護を続けていく際には家族同士で支え合うことも重要です。兄弟姉妹間で協力体制を作っておくことも必要ですから早めに相談しておくと安心です。
●親の現状や希望を確認する
・現在の健康状態(持病、かかりつけ医、服用している薬など)
・過去の怪我、病気、アレルギーについて
・介護が必要になったら誰に介護してもらいたいか
・将来どこで暮らしたいか(自宅 or 介護施設)
・延命治療について 等
●家族間で考えを共有する
・親の介護についての方針
・親の介護が必要になったときにできること、できないこと
・役割分担について(家事などの支援、契約や連絡調整、経済的支援) 等
2.介護に必要な費用を把握し、準備をしておく
介護が必要になった場合、お金の見通しをしっかり立てておくことが大切です。
生命保険文化センター※が行った調査では、過去3年間に介護経験がある人が介護に要した費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)は、住宅改造や介護用ベッドの購入費など一時的な費用の合計が平均74万円、月々の費用が平均8.3万円となっています。
また、介護を行った期間(現在介護を行っている人は、介護を始めてからの経過期間)は平均5年1カ月。4年を超えて介護した人も約5割となっています。
※ 2021(令和3)年度 生活保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」
介護費用は、親のお金でまかなうのが基本です。主に介護に充てられるお金としては、国民年金や厚生年金、共済年金などの公的年金、預貯金などが挙げられます。親しい親子関係の場合でも、「お金のことは聞き難い、話し合ったことがない」という方は多いかもしれません。
しかし、親の資産として預貯金、借入金がどれくらいあるのかを把握しておくことで、介護費用にどれくらい使えて、場合によっては家族で負担が必要な範囲の見通しを立てることができます。
また、通帳や印鑑、カード類などの保管場所、インターネットで管理している口座情報などもまとめておいてもらいましょう。
この続きは後編で。介護保険制度や相談窓口についてお伝えします。
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筆者紹介:
ちょうなん 百合絵
産業ソーシャルワーカー/社会福祉士・精神保健福祉士
地域包括支援センターで生活環境改善の支援や介護・権利擁護相談、認知症カフェ・介護予防教室の運営等を経験後、民間企業にて、高齢者施設やシニアサービスなど最新情報の収集に努めるとともに、従業員の高齢期の生活にかかわる様々な相談に従事。現在は、「働く女性が自分らしく耀く」ために、植物の力とソーシャルワーカーの視点でサポートしている。アロマを活用したカウンセリングやストレスマネジメントの提案など、働く女性のライフデザインに関する伴走型相談サービスを提供。