どうする介護費用?公的援助のアレコレ

介護費用っていったいいくらかかるものなの? 最近は介護に備えるための保険商品も登場してきて、
マチュア世代にとっては頭の痛い問題です。

介護の状況は人によって様々なので、一概にいくら必要とは言い切れませんが、在宅介護でさえ月に平均7万近くかかるという調査もあります(出典:家計経済研究所 2016「在宅介護のお金と負担」)。

自分やパートナーを生み育ててくれた大事な両親、できるだけのことはしてあげたいけれど、
そうは言っても、親の介護のために長年貯めた自分の貯金が底をつくなんてことは避けたいし・・・

公的援助でどこまでカバーできるものなのか、介護費用についてみておきましょう。

1. 介護保険、どこまで知ってますか?

■介護保険料:

40歳になると、健康保険料に加えて介護保険料を支払います。介護保険も健康保険同様に日本国内に住所がある人は全員(外国人も)支払う義務があり、この支払いは生涯続きます。65歳以上の高齢者の保険料は年金から天引きされます。

収入に応じた保険料は15段階(地域により異なる)。 段階の数、区分け基準も支払い保険料も自治体毎に異なります。

■介護保険による給付:

給付と言っても現金が支給されるわけではありません。「有料の介護サービスが少しの負担で受けられる」ということです。

要支援、要介護の認定を受けると介護保険から自己負担1割もしくは2割で介護サービス支援が受けられます。1割負担か、2割負担かの差は本人と世帯の両方に上限があり、単身なら年金やその他の所得合計が280万円以下、2人以上なら346万円以下の場合が1割負担、それ以外は2割負担になります。更に18年8月からは2割負担が3割負担に変更されます。

ただし介護給付には上限があり、支援限度額を超えた場合は自己負担になります(利用料は地域に応じて8段階)。従って、1割または2割分の自己負担と、限度額を超過した分が自己負担になります。(表1)


表1.給付サービス1か月あたりの自己負担金額目安(2017年度)(出典:“身内に介護が必要なときの手続き” マガジンハウス )

*標準的な地域の例:地域によっては加算がある。
*自己負担の割合は所得に応じて決定。
*支給限度額を超えた場合は自己負担になる。

ただし、給付が受けられるのは原則65歳以上(介護保険の第一号被保険者)からで、40歳から64歳まで(介護保険の第二号被保険者)は末期がんなど指定された16種の「特定疾病」の場合以外は介護サービスの対象ではありません。交通事故でもだめなんです。もちろん、40歳未満も給付の対象外。あくまでも「公的な介護保険」は高齢者向けのサービスなんですね。

2. 介護サービス

2.1 ケアプランに基づくサービス

ケアマネージャーが作成したケアプランに基づき、介護サービスの利用が決められていきます。訪問看護、訪問介護、入浴介護、デーサービス、福祉用具レンタルなど、様々なサービスがあるので、本人と親族の介護サポート状況に応じてケアマネージャーと検討して、優先順位を決めていきます。

在宅介護の場合は、洋式トイレへの改修などのバリアフリーの工事費用や、車いすなどの福祉用品購入費用の補助金などもケアマネージャーの承認のもと支給されます。

サービスを受ける回数などは個人で決められますが、限度額を超えた分は全額自己負担になるため、負担が高額になってしまう場合があります。自己負担が高額になる世帯には介護サービスの負担上限額が定められ、超えた分は還付される制度もあります。高額医療費も含めて合算して払い戻しが受けられる制度もありますので、自治体で確認しましょう。

2.2 介護サービス費用概算

介護サービス費用は自治体により異なるため、以下(表2)は目安です。

介護サービス費用
表2.介護サービス費用 
(出典:“身内に介護が必要なときの手続き” マガジンハウス )

※標準的な地域の例:地域によっては加算がある。

3. 市町村特別給付

市町村によっては無料で提供されるものや安価なサービスもあります。

例えば・・・配食、寝具乾燥、外出介助、散歩介助、訪問理髪、などです。

例)東京都品川区の場合(17年度)介護保険以外のサービス(有料)

  • 高齢者食事サービス(週2回昼食を配食、本人の状況による)
  • 徘徊高齢者探索システム利用料助成
  • 在宅介護者研修事業、介護者教室、介護者の集い

介護保険サービスを利用せずに、自宅で1年以上要介護4~5の介護者を同居介護する家族には介護慰労金として10~12万円が給付される場合もあります。ただし、給付の条件は厳しく、誰でももらえるわけではありません。

4. 介護休業給付

企業の介護休業を利用すると雇用保険から給付金が支給されます。(基本給の2/3程度)

  • 対象:介護休業開始日2年前に11日以上就業した月が12か月以上ある人
  • 期間:介護休業開始から最長3ヶ月
  • 支給額:休業開始時賃金日額x支給日数x67% 下限月額68,700円

介護休業は働き続けるために要介護者をどのように支援するかを検討し、実行に移すために手続きなどをするためのものです。この期間を介護に充ててしまうと、そのまま介護離職になる可能性が高いので、活用方法には注意が必要です。休職中に回復が見込まれない場合は施設や介護支援をどのように活用するかを休職期間中にめどを立てることに使うのが理想です。

厚生労働省 介護休業給付についてはこちらを参照

航空会社によっては、遠方の家族を介護するために飛行機を利用する人に向けて、介護割引の航空運賃が用意されている場合もありますので、こちらも要チェックです。

5. 介護費用の軽減制度

介護保険サービスの自己負担額が大きくなった場合、所得に応じて軽減措置があります。

例)夫婦で介護サービスを1か月限度額まで利用した場合の自己負担額が夫婦で4.7万円の場合、世帯年収が520万円以下なら上限が3.7万円なので1万円ほど月額もどる。

医療保険と介護保険の自己負担額の合計が限度額を超えた場合には “高額医療・高額介護合算制度” を利用して超過分の払い戻しが受けられます。

いずれも適用される項目と所得、条件などがあるので、役所の医療保険窓口で相談してみましょう。