親の介護には早めの準備が大切(後編)
いつ直面するかわからない“親の介護問題”。いざという時に慌てずに介護に向き合うためには早めの準備が大切です。親の突然の介護に備えて準備しておきたいポイント1、2は前編でご紹介しました。後編は介護保険制度や介護サービスの概要、相談窓口などをご紹介します。
<介護の準備のポイント>
- 介護について親や家族で話し合っておく
- 介護に必要な費用を把握し、準備をしておく
- 介護保険制度や利用できるサービスについて知っておく
- 地域の相談窓口「地域包括支援センター」を知っておく
3.介護保険制度や利用できるサービスについて知っておく
介護保険制度とは、介護が必要になった高齢者を社会全体で支えるしくみです。本人の所得に応じて1~3割の自己負担額で介護保険サービスを利用することができます。介護保険制度で利用できるサービスを知っておくと、介護にかかる費用の準備や、仕事と両立していくための計画も立てやすくなります。
●介護保険サービスを受けるには〜利用までの流れ〜
介護保険制度を利用するには、まず、親が居住している市区町村の窓口で要介護認定の申請をします。申請後は認定調査員などから訪問を受け、聞き取り調査(認定調査)が行われます。また、市区町村からの依頼により、かかりつけ医が心身の状況について意見書(主治医意見書)を作成します。
その後、認定調査結果や主治医意見書に基づくコンピュータによる一次判定があり、一次判定結果と主治医意見書に基づく介護認定審査会による二次判定を経て、市区町村が要介護度(要支援1・2、要介護1〜5)を決定します。認定結果は、申請後1ヶ月ほどで出ます。
介護保険では、要介護度に応じて受けられるサービスが決まっています。要介護度が判定された後、介護サービス計画書(ケアプラン)を作成し、それに基づきサービスの利用が始まります。
●ケアプランとは
ケアプランとは、 どのような介護サービスをどれだけ利用するか、どういった事業所を選ぶか等について決める計画のことです。介護保険のサービスを利用するときは、まず、介護や支援の必要性に応じてサービスを組み合わせたケアプランを作成します。ケアプランに基づき、介護サービス事業所と契約を結び、サービスを利用します。
【要介護1~5と認定された方】
・在宅のサービスを利用する場合:居宅介護支援事業者(介護支援専門員)に介護サービス計画(ケアプラン)を作成してもらいます。
【要支援1~2と認定された方】
・地域包括支援センター※に作成を依頼することができます。
※「4.地域の相談窓口「地域包括支援センター」について知っておく」参照
・施設のサービスを利用する場合:施設の介護支援専門員がケアプランを作成します。
●介護保険サービス
高齢者支援サービスの種類は、介護保険サービスのほか、自治体サービスや介護保険外サービスがあり、介護保険サービスには下記のようなものがあります。
<訪問系サービス>
ホームヘルパーが高齢者のお家を訪ね、掃除、洗濯、調理、買い物などの家事援助やおむつ交換、お風呂の介助などの身体介護を行うサービスです。
<通所系サービス>
デイサービスやデイケアと呼ばれています。日中に送迎をしてもらって施設に通い、体操など運動をしたり、レクリエーションをしたり、リハビリなどを行います。入浴や食事をするサービスもあります。
<宿泊系サービス>
介護をしている方が病気になって介護が難しいときや、介護に疲れ少し休みたいとき、旅行に行くときなど、1泊から数週間、宿泊することが可能なサービスです。
<福祉用具の貸与・購入助成>
介護ベッド等のレンタルやポータブルトイレ等の購入費を助成してくれます。
<住宅改修費助成>
手すりの取付け、段差の解消費用等の助成が受けられます。
4.地域の相談窓口「地域包括支援センター」について知っておく
介護保険を申請する場合、一般的には、市区町村の窓口や「地域包括支援センター」で相談します。「地域包括支援センター」は、地域に住む高齢者や家族のための『総合相談窓口』(市区町村単位で設置)です。保健師や社会福祉士、主任ケアマネージャーなどが在籍し、介護予防支援や包括的・継続的ケアマネジメント支援など、行政や医療機関、必要なサービスを繋ぐ役割を担っています。 ※入院中の場合は、入院している病院の「医療相談員」に相談してみましょう。
■親の居住地近くの地域包括支援センターを探すには?
自治体の高齢者窓口へ問い合わせるほか、検索サイト※などがあります。
※株式会社リクシル https://learning.lcat.jp/actions/map/
検索バーに住所を入力するだけで、近くの地域包括支援センターを検索できます。
親の介護は突然やってきます。いざというとき慌てないためにも、親が元気なうちから、介護保険制度や相談窓口などの基本知識を得て、準備しておけることは行っておくことが大切です。
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筆者紹介:
ちょうなん 百合絵
産業ソーシャルワーカー/社会福祉士・精神保健福祉士
地域包括支援センターで生活環境改善の支援や介護・権利擁護相談、認知症カフェ・介護予防教室の運営等を経験後、民間企業にて、高齢者施設やシニアサービスなど最新情報の収集に努めるとともに、従業員の高齢期の生活にかかわる様々な相談に従事。現在は、「働く女性が自分らしく耀く」ために、植物の力とソーシャルワーカーの視点でサポートしている。アロマを活用したカウンセリングやストレスマネジメントの提案など、働く女性のライフデザインに関する伴走型相談サービスを提供。