在宅介護と施設介護、どちらを選ぶ?(在宅介護編)
家族に介護が必要になった場合、自宅で行なう「在宅介護」にするのか、介護施設に入所する「施設介護」にするのかは、誰もが直面する悩みかもしれません。
今回のテーマは、「在宅介護」です。在宅介護のメリットや、自宅で介護をするための準備、注意すべきポイントをお伝えします。
<在宅介護のメリット>
●住み慣れた家や環境で、自分のペースで生活できる
●家族と一緒にいられるので精神的に安心できる
●施設に入居するより、経済的な負担は少ない
<在宅介護のポイント>
「在宅介護」というと難しく考えてしまう方もいるかもしれませんが、まず親の生活機能(できること・できないこと)の状況、病状や治療について把握しておくことが必要です。
1.現在の状況を把握・整理する
親 :心身の状態、生活機能(できること、できないこと)の状況、病気や治療について、
通院やリハビリの必要性などを把握
家族:介護生活で不安なこと、要望を整理
2.家族間で役割を決める
●キーパーソンを決める(配偶者、子、子の配偶者など)
●役割分担を確認(情報収集、サービス事業者との連絡調整、通院の付き添いなど)
●訪問スケジュールを組む 等
3.適切な住環境を整える
●心身機能と住環境を照らし合わせ、危険な場所や生活動線等の確認
●心身機能・住環境に適した福祉用具の選定、住宅改修
4.介護保険制度を理解し、サービス内容を知る
●申請からサービス開始までの流れの把握
●サービスの種類・費用・効果と具体的な利用方法の理解
●地域包括支援センター等の相談機関の活用
5.民間・公的サービスを活用する
●自治体独自の行政サービス(配食、移送、緊急通報など)
●民間サービス、ボランティアを活用(保険外ヘルパーなど)
<在宅介護で利用したい介護保険サービス>
在宅で受けられる介護サービスの代表的なものは、要介護者のご自宅へ訪問する「訪問介護」や「訪問看護」などの訪問系サービスと、要介護者が施設へ通いサービスを受ける「通所介護(デイサービス)」や「デイケア」などの通所系サービスなどがあります。
●訪問型サービス
訪問介護(ホームヘルパー)、訪問看護、訪問入浴、訪問リハビリテーション、居宅療養管
理指導(医療ケア・栄養指導など) など
●通所型サービス
通所介護(デイサービス)、デイケア(リハビリ)、ショートステイ(宿泊) など
●住環境を整えるサービス
福祉用具のレンタル、特定福祉用具の販売、住宅改修 など
要介護度により利用可能な頻度と自己負担額は異なります。ケアマネジャー※と相談しながら、必要な介護サービスを組み合わせ、要介護者に合うケアプランを作成しましょう。これらのサービスを上手に利用することで、介護される人の生活の質の向上につながり、介護をする人にとっても介護負担を軽減させることができます。
※ケアマネージャー(介護支援専門員)は、介護を必要とする方が介護保険サービスを受けられるように、ケアプラン(サービス計画書)の作成やサービス事業者との調整を行う、介護保険に関するスペシャリストです。
<在宅介護をするうえでの心構え>
●一人で抱え込まないこと
在宅介護では、要介護者と最も接する時間の長い主介護者に負担が集中してしまうことが多く、その状態が長引くと心身ともに疲弊してしまいます。介護を自分一人の問題として抱え込まず、相談できる相手(兄弟、親戚、友人、ケアマネジャー等)を作っておくことや、介護サービスを利用して自分の時間を確保できるようにすることが大切です。
相談は、地域の総合相談窓口でもある「地域包括支援センター※」を利用することもできます。
※地域包括支援センターについては、こちらをご覧ください。
https://next-st.com/post/oyanokaigo2/
●「ワーク・ライフ・ケア・バランス」を整える
仕事をしながら介護をするケースは少なくありません。介護をしている中で、突発的なことが
起こり、仕事に支障が出てしまうこともあります。肉体的・精神的・時間的な負担が長く続き、
仕事を辞めざるを得なくなってしまう「介護離職」が社会問題となっています。
最後まで住み慣れた自宅で親を介護したいという気持ちは大切ですが、その負担やストレス
を抱え込むと、心身ともに疲弊してしまいます。仕事と介護のバランスを整え両立するために
、介護休業制度を利用したり、介護相談機関を活用しましょう。
また、在宅介護を継続することが難しい場合は、施設介護を検討する必要もでてきます。
次回は、「施設介護」についてお伝えします。
筆者紹介:
ちょうなん 百合絵
産業ソーシャルワーカー/社会福祉士・精神保健福祉士
地域包括支援センターで生活環境改善の支援や介護・権利擁護相談、認知症カフェ・介護予防教室の運営等を経験後、民間企業にて、高齢者施設やシニアサービスなど最新情報の収集に努めるとともに、従業員の高齢期の生活にかかわる様々な相談に従事。現在は、「働く女性が自分らしく耀く」ために、植物の力とソーシャルワーカーの視点でサポートしている。アロマを活用したカウンセリングやストレスマネジメントの提案など、働く女性のライフデザインに関する伴走型相談サービスを提供。