在宅介護と施設介護、どちらを選ぶ?(施設介護編)

在宅介護と施設介護

 「在宅介護」に引き続き、「施設介護」についてお話しします。
 自宅での介護が難しい場合は、施設に入所するという選択肢もあります。有料老人ホームや特別養護老人ホームといった介護施設に入居し、介護士や看護師といった専門スタッフからサービスを受けます。

<施設介護のメリット>

 ●専門スタッフがケアを行なってくれる
 ●介護に必要な設備が整っている
 ●緊急時の対応にも安心できる
 ●家族の心身の負担が軽減され、ゆとりを持てる

在宅介護と比べて経済的負担は大きくなるものの、介護者の身体的・精神的負担が軽減されたり、安心できる等のメリットがあるといえるでしょう。

<高齢者の住まいの多様化>

 昨今、高齢者の住まいは多様化しており、さまざまな種類があります。まず、「施設」と「住宅」があり、施設は、国や地方自治体などの公的機関が運営を行っている「公的施設」と民間企業が運営をしている「民間施設」に大別されます。
 介護施設・老人ホームは運営体制や入居条件によって11種類に分けることができ、種類ごとに入居金や月額費用の相場もさまざまです。

 下記は、代表的な高齢者の住まいの一覧です。

運営種類対象者
公的施設特別養護老人ホーム介護保険の要介護3以上
公的施設介護老人保健施設介護保険の要介護1以上
公的施設介護医療院/介護療養型医療施設介護保険の要介護1以上
民間施設介護付有料老人ホーム概ね65歳以上
自立・要支援・要介護
民間施設住宅型有料老人ホーム概ね60歳以上
自立・要支援・要介護
民間施設グループホーム認知症の診断を受けた
介護保険の要支援2以上
住宅サービス付き高齢者向け住宅60歳以上 または 
要支援・要介護認定者

 サービス付き高齢者向け住宅は、自宅に近い生活が可能ですが、介護保険の在宅介護サービスを利用するため、基本的には重度化した場合に住み続けられません。支援・介護状態がどの程度なのかを加味して施設を選択することが大切です。

1.公的施設の特徴

 公的施設は国や地方自治体などの公的な団体が運営しており、介護保険施設とも呼ばれています。介護度の高い方や低所得者の支援を重視している点が特徴です。
 公的施設のメリットは民間施設よりも安い費用で利用できる(所得などによって異なる)場合が多いですが、人気が高いため待機者が多く長い期間待つ場合もある点がデメリットです。

 公的施設の種類は次のように分けられます。

 ●特別養護老人ホーム
●介護老人保健施設
 ●介護療養型施設
 ●軽費老人ホーム
 ●ケアハウス

2.民間施設の特徴

 民間施設は民間企業等が運営している施設で、高齢者のニーズを満たすことを重視している点が特徴です。
 民間企業が運営しているので公的施設よりもサービスが充実している点が大きなメリットと言えるでしょう。各施設で特色があるのでレクリエーションやイベントも多種多様なものが提供されています。サービスが充実しているためQOL(生活の質)の高い生活を送ることができますが、公的施設よりも費用が高くなってしまう可能性がある点がデメリットと言えます。

民間施設の種類は次のように分けられます。

 ●介護付有料老人ホーム
 ●住宅型有料老人ホーム
 ●グループホーム

<施設選びのポイント・注意点>

 ●必須条件と希望条件を整理する
 譲れない必須条件や、ある程度は妥協しても構わない希望条件を整理しましょう。
 例えば、求めているサービスや必要な医療ケアに加えて、負担できる費用なども重要なポイントです。 誰しも住み慣れた地域を離れるのは不安ですし、家族が通いやすいことも大切ですから、施設があるエリアも重要といえます。
 施設によって運営方針や医療体制などの特徴や強みがそれぞれ異なるので、求めている条件や健康状態に応じて必須条件と希望条件を整理してみてください。

●その他の希望条件も決めておく
 必須条件と希望条件を整理した後は、その他の細かい条件について考えてみましょう。
 例えば、入居してから看取りまで行うのか、介護度が重くなったら住み替えを行うのか等、先々のことを考えた計画を考えておくと、状況が変化した際にも慌てることなく対応できます。

●情報を集める
 施設選びに失敗しないためにも、細かく情報収集を行い、希望を満たしてくれる施設を選ぶことが大切です。もし入居後に「この施設は合わない」と感じてしまうと、ストレスになってしまうばかりか健康状態を悪化させてしまいかねません。
 施設のホームページを見たり、パンフレットなどの資料請求をして基本的な情報は押さえておきましょう。
 また、是非おすすめしたいのが施設見学です。職員の働きぶりや入居者の様子を確認でき、可能であれば食事も試食できると、実際の生活をイメージしやすくなります。もちろん、居室の状況や周辺環境などの住環境も併せてチェックしておく必要があります。

●専門機関に相談する
 介護施設の種類は多く、契約形態もそれぞれ異なるため、専門知識がないと混乱するケースが増えています。
 施設を選ぶ際には、目的や条件などはご本人・ご家族が決めるべきですが、どうしても決断が難しい場合はプロに相談をするのもおすすめです。プロは経験が豊富で様々な知識や施設の情報を持っているため、状況に応じたアドバイスがもらえるはずです。相談窓口は、ケアマネジャー・地域包括支援センター・民間の紹介センターなどがあります。

「在宅介護」「施設介護」についてご紹介してきました。
 それぞれのメリットとデメリットを充分に理解したうえで、ご本人に適した介護方法を検討しましょう。

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筆者紹介:

ちょうなん百合絵

ちょうなん 百合絵
産業ソーシャルワーカー/社会福祉士・精神保健福祉士

地域包括支援センターで生活環境改善の支援や介護・権利擁護相談、認知症カフェ・介護予防教室の運営等を経験後、民間企業にて、高齢者施設やシニアサービスなど最新情報の収集に努めるとともに、従業員の高齢期の生活にかかわる様々な相談に従事。現在は、「働く女性が自分らしく耀く」ために、植物の力とソーシャルワーカーの視点でサポートしている。アロマを活用したカウンセリングやストレスマネジメントの提案など、働く女性のライフデザインに関する伴走型相談サービスを提供。