47年の勤務の後は地域で社会参加

牟田園さん

先輩インタビュー:0016 その他:ボランティア

牟田園 美智子(むたその みちこ)さん

「ラフター (笑い) ヨガ」リーダー・「傾聴」ボランティア

■ 今は何をしてらっしゃいますか? 現在のお仕事を教えてください。 

今は地域の施設等で「ラフター(笑い)ヨガ」や、お話を聴く「傾聴」等のボランティアをしています。

「ラフター(笑い)ヨガ」は、笑うためのエクセサイズにヨガの呼吸法を取り⼊れて、笑うことで免疫⼒をあげるというインドのムンバイから始まった健康法で、ムンバイの医師マダン・カタリアが考案して世界中に広がっています。

「傾聴」では、お年寄りや、心の病を抱えている方たちのお話を、コーヒーを飲みながらその方に寄り添ってただひたすら「うんうん」と聴いています。心を開いて本心を話してくださるように信頼関係を築くのに1年くらいかかる場合もありますが、いったん信頼してくださるといろいろなお話をしてくださいます。家族には言わないでねという方もいらっしゃいます。認知症のお年寄りは何度も同じ話をされますが、その都度最初から聴いています。

後は、地域のNPO法人ロクマルで入力事務やキッチンの仕事を月に数回お手伝いしています。

■ 前職ではどんなお仕事をされていましたか?

私立の学校法人で事務の仕事をしていました。母校でもある短大で、卒業してからずっと、20歳から67歳までの47年間そちらで勤務しました。
目黒にある学校で、目蒲線が目黒線に変わっていく変遷をずっと見てきました。
(注:東急電鉄目蒲線が2000年に路線分割し、目黒~武蔵小杉間が目黒線となる)

■ 前職を辞めたのはいつですか?

60歳で定年を迎えましたが、その後再雇用で7年務めました。給料は下がりましたがずっと同じ役職のままで居心地は良かったです。子供が小さな頃は学童もなく、30代は友人達と学童保育所を作るところから始めました。 当初は今のような週休2日ではありませんでしたが、仕事のない土曜日や夜に活動をしていました。

■ なぜ、今の道を選んだのでしょうか? 

前職を辞めてから1週間くらいはゆっくりしようと思ったのですが、47年間ずっと働いていたので何もしないでいると、段々おいていかれる気分になりました。

それでもニットソーイングの教室に通ったりしていたのですが、1年くらいたった頃にたまたま「傾聴」のボランティア講座を区の広報誌で見て参加してみたのがきっかけです。当時は「傾聴」という言葉すら知りませんでした。

話すのは苦手だけれど聞くだけならできるかなと、「何かしたい」という気持ちから講座を受講したのですがすぐにはボランティアには結びつきませんでした。施設の見学をしながら最初は研修として現場に行っていました。当時は手探りでした。そのうち、地元のボランティア団体に所属して活動を始めました。「ラフター (笑い) ヨガ」を知ったのもこのころでした。

■ 収入に不安はありませんでしたか?

「傾聴」はほぼボランティアで行っています。「ラフター(笑い)ヨガ」はボランティアとしてやっているところもありますが、今伺っている NPO の施設は非常勤契約で給与としていただいております。お金はもちろんあればうれしいですが、自分の身の丈で良いと思っています。ふたりの娘はすでに独立し、今は主人とふたりの暮らしなのでそんなに経済的なことを追求しなくてもいいと思っています。

■ セカンドキャリアを考えて、そのための準備を始めましたか?

特に何も準備はしていませんでした。定年後の再雇用は1年契約でしたが元気なうちはあちこち行きたいと思っていたので、7年たって、もうそろそろいいかなと思い辞めました。辞めたら好きなことをしようと思っていて、ボランティアをやろうとも思っていませんでした。

■ 今は地域で活動されていますが、地域で活動することは以前から考えていらっしゃいましたか?

まったく考えていませんでした。「傾聴」のボランティアはたまたま区の広報誌を見て見つけたのですが、それまでは地元のことはまったく知りませんでした。区の広報誌も現役時代は見たこともありませんでした。区役所の場所くらいしか知らなくて、コミュニティセンターの存在すら知りませんでした。

■ 地域での活動に障壁はありませんでしたか?苦労されたことは?何が課題だと思われますか?

現役時代はご近所とも最低限のお付き合いでした。合理的でないと嫌な性格でベターとした濃密な付き合いは苦手なので、ゴミ出しや回覧板を回すときに挨拶する程度でした。

地域はコミュニティができていて、そこに入っていくのには勇気が必要です。
家のご近所よりも、ある程度知らない人たちの中のほうが入りやすいと思います。もしこれから地域に入りたい人がいれば、退職してすぐは無理なので会社を辞める前から少しづつ準備をした方がいいと思います。情報を仕入れるところからですね。いきなり地域の扉を開けるのは勇気が必要です。一歩踏み出す勇気ですね。

キッチンでお手伝い
NPO法人ロクマルのキッチンでお手伝い

■ これまでに試行錯誤や苦労した時はありましたか?  今、抱えている問題などあれば教えてください。

私は仕事を辞めてから動き出したので大変でした。想像したこともない世界でした。今思えば、辞める5年くらい前から準備をしていれば、もう少しスムーズにできたかなと思います。

行き当たりばったりでしたが、学校法人での事務の仕事は一区切りついて、自分の中で完了と蓋をしてしまいました。あれはあれで一生懸命やったので良かったかなと思います。NPO法人ロクマルでの事務の仕事に、あのときの経験は役だっていると思いますし・・・

今は特に抱えている問題はありません。後期高齢者の年齢に近づいてきて足腰が気になるくらいでしょうか。

■ 今の生活に満足されていますか?

まあそうですね。コロナ(注:新型コロナウィルス)がなければ、良い世の中だと思います。

■ 後輩にアドバイスするとしたら?

定年退職後30年あります。身体が元気なのも20年くらいはあります。何を大事にしたいのか何をやるのかを漠然とでも考えておいて、その準備をしておくと
すーと次のステージに入って行けると思います。地域との関わりを少しづつでも広げていくのも必要だと思います。

世の中には様々な分野があって、これを知り得たら面白い。できるかどうかわからなくても若い人はチャレンジしたら良いと思います。やってみて違っていたら変えればいい。考え過ぎたらだめですね。

■ 今後の展望についてお聞かせください。

今、「ラフター(笑い)ヨガ」はリーダーの資格ですが、その上の「ティーチャー」になるための講座を受講中です。自分でも「ラフター(笑い)ヨガ」のリーダー養成講座を開催できるようになることが、私の今の目標です。

■ 最後に、働くということは貴女にとってどういう意味を持っていますか?
なぜ、働いているのでしょうか?

社会に対して何かを生み出す。社会参加ですね。それでお金になればベターですが、自分への満足感、自分ができることを試したいですね。身体が続く限り、いろいろなことをしていきたいと思います。

■ 編集後記

47年という長い年月同じところで勤務され、その仕事は「もう完了と蓋をした」と表現された牟田園さん、やりきったという思いでしょうか。今度は活躍の場を地域に移しボランティアで社会に貢献されているお姿は自然体です。「現役時代から少しづつ準備を始め、いろいろなことにチャレンジしてやってみて違っていたら変えればいい」というお言葉は私がいつも皆様にお伝えしていることとまったく同じで驚きました。 身体が続く限りいろいろなことをしていきたいと次の目標に向かっているお姿は頼もしく、先輩ながら応援させていただきます。(2020年10月16日オンラインにて)