定年からの再出発 ー 銀行員からメタバースの世界へ。人生の後半戦は、大好きなITで社会に恩返しを。

先輩インタビュー:0022 起業:メタバースで女性支援

豊永 真由美(とよなが まゆみ)さん

NextStoryセカンドキャリア研修第7期受講生

■ 今は何をしてらっしゃいますか? 現在のお仕事を教えてください。 

 今年の5月14日に会社を立ち上げました 。現在はIT系、特にバーチャルリアリティ(VR)やメタバースといった技術を活用して、女性の活躍支援をサポートする事業に取り組んでいます 。単なる技術提供ではなく、新しいテクノロジーの力で女性たちがより自由なスタイルで輝ける場所を作りたい、そんな思いで毎日試行錯誤しながら事業を運営しています 。

■ 前職ではどんなお仕事をされていましたか?

 新卒から銀行や投信投資顧問など、主に金融機関でキャリアを積んできました。銀行では、皆さんがイメージする預金や住宅ローンとは少し違い、貿易金融(トレードファイナンス)」という、貿易に関わる融資や海外プロジェクトへのファイナンスを専門にしていました 。直近ではバックオフィス全体のマネージャーとして、コンプライアンス管理や新人の採用・育成、業務管理規定の制定なども任されるようになり、組織を支える業務に広く携わっていました 。

■ 前職を辞めたのはいつですか?

 昨年の11月末に定年を迎え、その後は再雇用という形で契約しましたが、今年の4月末で退職しました 。私の勤め先は、再雇用後も現役時代と給料やポジションが変わらないという非常に恵まれた条件で、あと5年はそのまま働くこともできました 。しかし、自分の「仕事年齢」を逆算した時、本当にやりたいことに挑戦できる時間は限られていると感じ、良いきっかけだと思って一歩踏み出すことに決めたのです 。

■ セカンドキャリアのための準備を何かされましたか? 

 コロナ禍で在宅時間が増え、「定年後はこんな生活になるのかな」とはっと気づいたのがきっかけです 。自分の専門分野が非常に狭く、外の世界では「潰しが効かない」という危機感もあり、まずは経営を体系的に学ぼうと大学院へ通いMBAを取得しました 。当初は会社の仕事に活かすつもりでしたが、そこで学んだ経営者の視点やマネジメントの知識が、結果として現在の起業という選択を支える大きな土台になっています 。

■ セカンドキャリアを考え始めたきっかけは? なぜ、今の道を選んだのでしょうか? 

 実はもともと理系志望で、子供の頃から電子回路を組んでラジオを作ったり、中学でアマチュア無線の免許を取ったりするほどメカやITが大好きだったんです 。銀行員として働く傍ら、趣味で3Dモデリングを学びに行くなど、デジタルへの関心はずっと持ち続けていました 。

 そんな中、経営の勉強のために参加した「女性起業家育成プログラム」が運命を変えました 。当初は起業するつもりなどなく、勉強の成果を発表するつもりで「ピッチコンテスト」に登壇したのですが、そこで思いがけず高い評価をいただいたのです 。神戸市のプログラムでは最優秀賞をいただき、さらに大阪産業局が主催する「LED関西」では、約600人の中からわずか10名のファイナリストに選ばれました 。この受賞によって15社ものサポーター企業から「一緒にやりましょう」と声をかけていただき、長年の夢だったITの道が本職へとつながりました 。

LED 関西

■ 収入に不安はありませんでしたか?

 長年の安定した収入がぷつりとなくなることには、周りからも「もったいない」と言われましたし、不安がなかったと言えば嘘になります 。ただ、定年退職金という安心材料があったことと、同じタイミングで独立した主人が「1年くらいはスネをかじってもいいよ」と笑って背中を押してくれたのが心強かったですね 。失業保険がもらえなかったのは少し計算外でしたが、それ以上に自分の事業を優先したいという覚悟の方が勝りました 。

■ これまでに試行錯誤や苦労した時はありましたか? 今、抱えている問題などあれば教えてください。

 会社員時代は最終的な責任を会社が取ってくれましたが、経営者は何から何まで自分一人で決めなければならず、その「自由さと怖さ」を日々感じています 。また、アクセラレーションプログラムで入賞したことから、事業をどんどん大きくする「スケール化」を期待される場面も多いです。ですが、私自身は残りの仕事人生を考え、無理な拡大よりも自分らしく活動できる「ライフスタイル起業家」でありたいという想いがあり、そのギャップに少し悩むこともありますね 。

■ 今の生活に満足されていますか?

 はい、楽しいですね。銀行員時代のようなレールに乗った働き方とは違い、毎日が新しい発見の連続です 。まさに「遠足に行く前日」のようなワクワクした感覚で、アイデアを形にしている今の時間がとても刺激的です 。この楽しさを失わずに、「ハードシングス(困難)」をしっかり乗り越えられる事業の進め方を模索しているところです 。

LED 関西 ファイナリスト

■ 後輩にアドバイスするとしたら? 

 人生は本当にあっという間です。コロナ禍で社会が一変したように、いつ何が起こるか、いつ体が動かなくなるか分かりません 。やりたいことを「いつかできる時が来たら」と大切に手元に残しておいても、その「いつか」は永遠に来ないかもしれない 。だからこそ、悔いが残らないように「今やらない理由は何なのか」を真剣に考え、勇気を持って一歩を踏み出してほしいなと思います 。

■ 今後の展望についてお聞かせください。

 単に利益を追求するだけでなく、事業を通じて社会に何かをお返ししたいという気持ちが強いです 。銀行員という公共性の高い仕事を経てきましたが、これからの人生後半戦は、もっと今まで助けてくれた方々や社会へ還元していく役割だと思っています 。メタバースという新しい力を使って、誰かの役に立っていると実感できるような、そんな温かい事業を育てていきたいですね 。

■ 最後に、働くということは貴女にとってどういう意味を持っていますか?
なぜ、働いているのでしょうか?

 私にとって働くことは「社会や人と深くつながること」そのものです 。以前、1年ほど専業主婦も経験しましたが、自分には社会との関わりが必要だと痛感しました 。人は一人では生きていけず、誰かのおかげで生かされています 。だからこそ、もらうばかりではなく自分からも「ギブ」する。そのサイクルの中で自分の役割を果たすことが、私にとっての働く意義なのだと今は確信しています。

■ 編集後記

 パワフルで実行力のある豊永さん、メタバースという新しい世界の扉を私たちに向けて開いてくださいました。彼女がこれからどんなビジネスを展開していくのかとても楽しみです。

(2025年12月17日オンラインにて)

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