第二の人生を生き生きと働き続けるためのガイド2

強みの効果的な伝え方

前回、第二の人生の働き方として、複数の選択肢が考えられること、そして、目指す働き方を決めた後は、それを念頭に置きながら、「誰のどんなニーズ(困り事や願望)に対して、どうやって解決・達成できるのか?それをどう効果的に相手に伝えるのか?」という問いへの答えを探していくことが大事とお伝えし、この問いに答える際のベースとなる「実践知やスキルなどの強みの棚卸の仕方」について解説しました。

今回は、「強みの効果的な伝え方」について、お伝えします。第二の人生で新しい仕事への扉を開けるには、それまであなたがいた世界での肩書きよりも、あなた自身が今、どういう強みを持って何を提供できるのかを具体的に伝える力が求められるからです。

ご自身の強みとして、「問題解決力に優れている」、「人間力に優れている」、「コミュニケーションが得意」、「営業に強い」などを挙げたとしましょう。こういった表現で、相手はあなたの強みを十分理解できるでしょうか?

答えは、「否」です。なぜなら、これらの表現は、あなたの「解釈」に基づくものだからです。何をもって「問題解決力に優れている」と言えるのか、優れていることを示す事実を根拠として提示することが必要です。この場合は、実際に困難な問題を解決したことを示す事例を考えましょう。

「人間力に優れている」は、もっと漠然とした表現であり、人によって定義は様々です。そこで、例えば、「多様なメンバーの強みを理解して各自が強みが発揮できるような環境を整えた」といった形で、より具体的に示すようにしましょう。

具体的にするためのコツとしては、「定量的」と「比較」です。「定量的」=数値を用いて表現するというのは、例えば、「多様なメンバー」というのを何人から構成されているのか、外国人が含まれていたら、何ヵ国の人達がいたのか、を示すということです。

「営業に強い」といった強みは、数値で表現すると、特に効果的です。売上の数値を示したり、マーケットシェアを示したりしてみましょう。これに比較を入れると、「前年度と比較して、売上を30%アップさせた」「ターゲットの数値より、売上を10%アップさせた」「業界の売上が前年に比べて平均で5%下がった中、5%売上を上昇させた」「営業担当30人の中で、トップの成績を収めた」といった形になります。いかがでしょうか。相手がよりあなたの強みをイメージしやすくなったのではないでしょうか。

第二の人生では、業種を変えることもあるかもしれません。業種が違う相手に対して伝える場合は、後半の2つの例の方が伝わりやすいです。なぜかと言うと、前半の「売上が前年度に対して30%上がった」のがどれくらいすごいことなのか、よくわからない場合があるからです。他が売上低迷で苦しんでいる時に、売り方を工夫して売り上げを上昇させた、あるいは、同じ条件下の同僚と比較して抜きんでた売上を上げた、と言えると、説得力が増します。さらに一歩進めて、「受賞につながった」などと言えると、すごさがよりはっきりとわかります。特にセカンドライフでは、これまでとは異なる業種や組織で働くことが多くなります。コンテキストが異なる環境にいる人たちに、あなたの強みを認識してもらうための工夫が欠かせません。

STAR+Iというフレームを活かして、ストーリーで語るというのも効果的です。STARは、Situation(状況)、Task(タスク)、Action(行動)、Result(結果)の頭文字を取ったものです。そこに、Impact(インパクト=与えた影響)を加えています。

どんな状況だったのか、どんなタスク(やらなければいけないこと)があったのか、それらに対してどんな行動を取ったのか、どんな結果が得られたのか、どんなインパクトがあったのか、を順番に語っていきます。

フレームの力は、強力です。これに従って話すだけで、思考が整理され、わかりやすく伝えることができます。STAR+Iは単にやった結果だけを示すのではなく、元々の状況の大変さやそれを乗り越えるために取った工夫、結果が組織や関係する人達に与えた影響も示すことができるため、あなたの強みをよりイメージしやすい形で伝えることができます。

ストーリーだと、記憶にも残りやすくなりますね。伝える際に常に留意していただきたいのが、「相手目線」です。相手の立場にとっていかにわかりやすいか、興味深い話になっているか、その視線で伝えようとしている内容をレビューしてみてください。

今回お伝えした「強みの効果的な伝え方」は、汎用的なものです。相手が誰であっても、基本として押さえておいていただきたいものです。伝える相手に応じて「味付け」をする必要があります。次回は、「相手のニーズ(困り事や願望)をどう探り当てて、それをどうやって解決・達成できるのかをどう効果的に相手に伝えるのか?」について、取り上げます。

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筆者紹介:

レジュメプロ 代表 井上 多恵子

大手グローバル企業で人材育成に従事しながら、キャリア・ディベロップメント・アドバイザーとしての知見を活かし、英文履歴書コンサルタント として、留学/転職/移住を希望する方々を中心に、英文履歴書などの書類の作成と面接をサポート。レジュメプロ アドバイザー寺澤恵との共著に、『心をつかむ英語アピール力』税務経理協会(2010)『プロが教える英文履歴書の書き方―自己分析から面接まで』DHC(2004)『英文自己PRと推薦状~磨こう!自己アピール力』税務経理協会(2003)がある。

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