目標は「あらぁ、私これでも100歳なのよ!」という人生

先輩インタビュー:0008 起業:女医

村崎 芙蓉子(むらさき ふよこ)先生

女性成人病クリニック院長

■ 今は何をしてらっしゃいますか? 現在のお仕事を教えてください。

銀座で女性成人病クリニックを開業し、25年が過ぎました。更年期前後の女性が活き活きと働けるホルモン補充療法を行っています。ホルモン補充療法は日本ではいまだに十分に普及しているとは言えませんが、取り組んでいる医師は増えています。

■ 退職前はどんな仕事をされていましたか?

循環器内科医として働き続け、最後は新宿三井ビルクリニックの副院長を務めていました。あの当時は“女性は子どもができると仕事を辞めてしまうので使えない”と言われていた時代でした。後輩達が後ろ指刺されないように二度の出産後も、男社会の中で長年無理して頑張って働き続けて現在に至っています。

■ なぜ、今の道を選んだのでしょうか?

循環器医として働いていた時に、女医さんだから女性の病気を分かってくれるかもしれないと尋ねてくる閉経期の女性に、手助けを出来なかったという自己反省があります。女医ならこの苦しみ、つらさを治してもらえるだろうとすがるように尋ねてきた患者さんに、鬱っぽいといえば心療内科を紹介し、関節痛なら整形外科医に、体が痒ければ皮膚科にと個別に紹介して、トータルに診てあげられなかった。

更年期障害という言葉がまだ一般的ではなかった30年ほど前、50代に自分自身が体調不良で大変な思いをしました。うつ症状になり、いろいろな所が不調になり、高度な疲労感に悩みました。

その後、ある文献に出会い女性ホルモンを試したところ、長年の不調が1日で消えてしまいました。そのとき初めてうつ症状を含め私を苦しめていたすべてが更年期障害症候群だったと気付きました。その後自分を実験台にしながら、文献上のホルモン補充療法を自分なりに確実なものにしていきました。

この自分の体験から得たホルモン補充療法こそ閉経期の様々な訴えを救えると思い切って、更年期専門のクリニックを開業しました。57歳の時でした。

更年期では鬱にもなるし、決断力も実行力、行動力も衰えてしまう。会社人生の重要な時期に体調の不良のために、活躍できないのはとても残念です。現在ならホルモン補充療法により、その大事な時期も乗り越えられます。そういう悩める患者さんを少しでもお役に立てればと思って開業しました。

キャリアアップをしていく女性なら更年期症状の事を少し勉強なさっておくといいですね。また、更年期障害など全くなかったというひともいますが、人はそれぞれ違います。人は人、自分は自分。我慢したり、強がることはありません。決して恥ずかしいことではないのです。

■ セカンドキャリアの準備を始めたのはいつ頃ですか? 考え始めたのはいつ? 

準備は半年程度でした。ホルモン補充療法により自分にも元気が出て、決断力、実行力が出ていたのだと思います。その勢いで立ち上げました。私は一人娘で育ったので、誰かに相談するということが苦手でした。クリニックの場所は友人のお連れ合いの不動産屋さんに探して頂きましたが、それ以外は診察室のレイアウト、ロゴやカルテや診察券まで自分で作成しました。ホルモン補充療法は当時では新しい治療法でしたので、開業医専門の医療コンサルタントも何の予測も立てられなかった。それにすでに57歳で借金もしたくなかったので、自らの老後のための貯金と、夫からの借金で立ち上げました。

■ これまでに試行錯誤した時はありましたか? 

数年前まで借りていたクリニックの場所が再開発となるために立ち退きを宣告されました。開業して20年以上もたち、既に77歳になっていましたので、辞め時かと悩みましたが、体調が悪いわけではなく、気力もあったので、継続することにしました。次の物件探しや、立ち退きにあたる交渉など大変なストレスでしたが、現在の良い場所が見つかりました。経済的負担は大変ですが、立ち退き時の補償金をつぎ込んで、元の取れないめちゃくちゃな決断でしたが、患者さんと自分のために移転しました。電車通勤をしているので、銀座駅からも近くて便利な場所で移転できてよかったと思っています。ここで人生最後の花を咲かせているところです。

■ 今のかかえている問題は?

自分の健康です。現在私は83歳ですが、皆さんの言う通り80歳からの老化はすごいですね。こんなつもりではなかったということがあり、80代を仕事人として生きることはなかなか大変です。
この年になると大事なのは骨と筋肉。これだけはなんとしても維持しなくては!!
そのために電車通勤1時間はいい運動かもしれません。現在不自由はないけれど用心しながら駅の階段も手すりに掴ることにしています。骨と筋肉の維持強化のために適切な運動をするようにと患者さんにはアドバイスしますが、私自身は運動嫌いなので内心困っています。どうしたらいいでしょう?(笑)

■ 今の生活に満足していますか?

満足していません。外に出ているので、家の中の断捨離の時間が足りません。患者さんたちと同じ悩みをかかえているので、その話を参考にしながら、遅々と進まぬ断捨離に取り組んでいます。

■ 後輩にアドバイスするとしたら

医者は定年がないので、ずっと働けますが、企業にいる方は深刻かと思います。会社にすべてを捧げる生活はどうかしらね。現役で働いていながらでも定年後のヒントをそこから得られるかもしれません。

いわゆる社畜に徹していたら駄目ですね。シアトルにいる友人から聞いたのですが、アメリカに“バケット・リスト”という言葉があるのですって。働いている時にこそやりたいこと興味があること等をひとまずバケツに放り込んでおく。仕事から離れたら、そこから一つずつ取り出して生活の楽しみにしていくという意味だそうです。年老いた時、バケット・リストに中身がないのは寂しいですね。趣味でも興味のあることでも耕し続けてください。今は良いロールモデルが沢山出てきています。60代や70代でチャレンジしている人がいます。いくつになってもチャレンジできますよ。恋もできるかも(笑)

■ 今後の展望についてお聞かせ下さい。

まだまだ困っている方のお役に立ちたいと思います。ホルモン補充療法は60歳近くなると保険がききません。ここのクリニックは自由診療なので、そういう方々も治療は続けられます。また薬剤も長期に出せますので、2,3か月に一度というスパンでいらっしゃれています。地方からも来られます。若々しくいたいということで、60代後半になってから初診でいらっしゃる方も沢山いますので、そういう方々の救済機関でいたいです。私自身も自分をまだ実験台としてこの医学を続けていくつもりです。

■ 最後に、働くということは貴女にとってどういう意味を持っていますか?なぜ、働いているのでしょうか?

60年近く、ずっと働いてきたので、働かない人生を考えたことがありません。おそらく家にいても家事は相変わらず手抜きですね。患者さんは私にあうと元気が貰える、元気になるとおっしゃいます。しかし私もそういう患者さんから元気を頂いているのです。今はそれが嬉しくて働いています。神様が、働ける頭と体を下さっている間はきっと働いていますよ。

先生の診療所 女性成人病クリニック のサイトはこちら
http://www.fuyoko.com/

■ 編集後記

先生と出会って10年。体を診てもらうというより先生を人生の先輩としてあこがれてきました。いつまでも美しく、お洒落でお元気な姿に励まされています。

土曜日は大好きな映画を見るために8:30から映画館の梯子をする。一日4本、おにぎりをかじりながら観るのを楽しみにされています。お洋服も一味違うファッション、赤いマニュキュアも憧れです。(2018年8月31日)