第二の人生を生き生きと働き続けるためのガイド3
相手のニーズ(困り事や願望)の探り当て方
本ガイドでは、初回は「実践知やスキルなどの強みの棚卸の仕方」について、そして、前回は「強みの効果的な伝え方」についてお伝えしました。今回は、「相手のニーズ(困り事や願望)の探り当て方」について、考えてみます。
第二の人生を生き生きと働き続けるためには、周囲とのコミュニケーションが大切です。周囲の人のニーズ(困り事や願望)を探り当てていくことを意識すると頼りにされて、自分が何かを提供できるチャンスをつかむことにつながります。
相手のニーズを探り当ててやりたいことの一つが、相手が抱えている問題の解決支援です。その際には、「一番取り組むべき問題は何なのか」を特定してから取り組むようにしてください。
例えば、「英語力が低い」ということに対して、読み書きとリスニング、スピーキング全てに取り組むのではなく、それらの中のどれが一番問題となっているのかを特定してから、取り組んでください。私が英語指導をする際には、更にその上流にある願望を依頼者と一緒に考えます。「何のために英語を学びたいのか?」「英語を使って何を達成したいのか?」といった願望を明らかにしてから、そのために求められる英語の力を特定していきます。英語は目的を達成するための手段の一つなので、目的の明確化を優先するのです。
私が今教えている主婦の方は、海外旅行先で使う英語を知りたいということで、機内での会話や入国審査でのやり取りから始めました。大学の友人には、自分が担当している仕事と提供できる価値について魅力的に伝えるための会話を、そして、食事療法をしている友人には、食事療法を英語でできるような表現を作成して覚えてもらいました。
問題に対して思い込みで考えた解決策を求めてくる人もいます。例えば、「イノベーションを起こすためのスキルを教えて欲しい」という要望があったとします。その声に応えて、イノベーションを起こすためのスキルを教えても、一向に職場でイノベーションが起きないことがあります。その場合は、スキルが問題なのではなく、イノベーションを歓迎しない組織風土に問題があるのかもしれません。
問題として捉えていること自体が、ずれている場合もあります。私が代表を務めているレジュメプロで提供しているサービスの一つに、英文履歴書の作成があります。「職務経歴書を作成したので、英訳してください。」という依頼に対して、英訳だけしてお戻ししたことは、依頼者からの要望があったケースを除き、これまでにありません。「効果的な職務経歴書になっていない」ことが問題だからです。応募先が求めている条件に合致しない形で書かれていたり、前回お伝えした「効果的な強みや実績の書き方」ができなかったりしている職務経歴書が多いため、まず職務経歴書自体に磨きをかけてから英訳しています。
事実に基づいて問題が考えられていない場合も多いです。「仕事ができない部下を何とかしたい」という人がいます。「仕事ができない」というのは、上司の解釈です。「仕事ができない」という結論にどうやって至ったのか、解釈のもとになった事実をできるだけ客観的に捉えることなくしては、問題を適切に解決することはできません。
「残りの部下5名は、締め切り前に必要な書類を提出したにも関わらず、Aさんは提出せず、しかも遅れる旨の事前報告もなかった」という具体的な事実が一つでもあれば、そこから考えていくことができます。Aさんが提出しなかった理由と事前報告をしなかった理由は何なのか。段取り力に問題があるのかもしれないし、モチベーションが下がっているのかもしれません。ビジネスパーソンとして締切を守る、報告をする、という基本がわかっていないのかもしれません。仮設を立て、それを検証していくことで、問題点が見えてきます。
多くの場合、悩みや問題点についての話は、漠然としています。それを質問により明確にし、事実を洗い出し、表層的な問題にならないよう、「なぜそうなのか?」繰り返し聞いていくことで、根本的な問題を一緒に探っていく中で、貴方に対する信頼度も高まっていきます。コーチングを学ぶことで質問力を上げると、より質の高い解決を提示できるようになるので、お薦めです。問題が見えて初めて、それに対して自分が持っているスキルや実践知などがその解決に役立つかを考えます。問題の中には、貴方自身で対応できないものもあるでしょう。その際には、貴方の人脈を上手く活かすことで対応できないか考えてみてください。
誰かの悩みを聞く機会があったら、すぐ解決策に走らず、まずは悩みを事実で捉えて明確化し、対処することで効果が出る根本問題をクリアにする。そして、それをどうやったら解決できるのか、自分の人脈まで広げて考えて提案していくことで、貴方が提供できる価値を高めていってください。
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筆者紹介:
レジュメプロ 代表 井上 多恵子 <国家資格キャリアコンサルタント>
大手グローバル企業で人材育成に従事しながら、キャリア・ディベロップメント・アドバイザーとしての知見を活かし、英文履歴書コンサルタント として、留学/転職/移住を希望する方々を中心に、英文履歴書などの書類の作成と面接をサポート。レジュメプロ アドバイザー寺澤恵との共著に、『心をつかむ英語アピール力』税務経理協会(2010)『プロが教える英文履歴書の書き方―自己分析から面接まで』DHC(2004)『英文自己PRと推薦状~磨こう!自己アピール力』税務経理協会(2003)がある。
レジュメプロのサイトはこちら
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