働くことは「明日を生きること」

先輩インタビュー:0013 転職:団体事務局長

太田 良子(おおた りょうこ)さん

企業年金連絡協議会 事務局長

■ 今は何をしてらっしゃいますか? 現在のお仕事を教えてください。 

2019年4月から企業年金連絡協議会で事務局長として事務局の運営総括をしています。

企業年金のポータビリティの役割、政策提言等のナショナルセンターの役割を担う厚生労働省認可の「企業年金連合会」という法人がありますが、「企業年金連絡協議会」は、さらに実務者が集まって企業年金についての勉強会を開催するなど、それぞれが切磋琢磨して知識の底上げをめざしている団体です。

■ 前職ではどんな仕事をされていましたか?

企業年金連合会の方に40年在籍していました。父が社会保険関係の仕事についていたこともあり、自然とこの分野に興味をもちました。

年金関連の事務処理の多くは女性が担っていることが多いので、女性が多い職場でした。半分以上は女性だったと思います。そこで、いろいろな仕事を経験してきました。

40代後半か50歳になった頃に記録整備室長という役職につきました。女性が多い職場とは言え管理職の女性は皆無で、私が初めての女性管理職でした。ちょうど女性の管理職登用の流れの中での抜擢でしたが、周りも驚きましたが私自身もやっていけるか不安でした。

その後、研修課長になり、企業年金について年間70回以上の研修を実施し、私自身も講師として参加者の皆さんに講義しました。研修の仕事に4年従事した後は広報課長となり、月刊誌の発行や連合会ホームページの運営、さらにマスコミ対応なども行いました。

また仕事で役員秘書を務めたこともあります。

■ 前職を辞めたのはいつですか?

連合会を辞めたのは2019年、60歳の定年退職でした。

■ なぜ、今の道を選んだのでしょうか?

嘱託で残る選択肢もありましたが、それだと事務の仕事になってしまい今までの知識が活かせない。今までの知識と経験を活かして何かしたいと思っていました。ちょうど前事務局長が退任するのでどうかと声をかけていただきました。

実はあまり「定年」とか「転職」とかいう感じがしていません。「企業年金連合会」と「企業年金連絡協議会」は同じ企業年金に携わる仕事ですし、関わる人も同じです。職場もフロアが変わっただけですし(笑)

■ セカンドキャリアの準備を始めたのはいつ頃ですか? 考え始めたのはいつ? 

女性が多い職場でしたが女性で定年を迎えた人はわずかで参考になるロールモデルがいませんでした。定年の一年前くらいから何とかしなきゃと思っていたのですが、忙しかったこともあり、積極的に次の仕事を探してはいませんでした。今の仕事も定年を迎えるギリギリになって、「こういう仕事があるが、やる気があるか」と声をかけていただき、ラッキーでした。

■ これまでに試行錯誤や苦労した時はありましたか?  今、抱えている問題などあれば教えてください。

まだ半年ですし(注:インタビューは昨年10月)仕事も前職の延長線上なので、特に困ったことはありませんが、しいて言えば引継ぎの期間が短かったことから手探りで仕事をこなさなければならないことです。

以前は組織の中の一員でしたが今は事務局長として自由にできる分、ひとりで全部やらなくてはならないたいへんさはあります。また、役員はいるのですが、皆さん非常勤ですので、ある程度自身で判断しなければならないという戸惑いもあります。ですが、大きな問題は特にありません。

太田さん

今の職場は明確な任期がありません。何年でもいられます。そういう中で私なりに、頑張って勉強したいと意欲がある実務者の皆さんを支援していきたいと思っています。前職の「連合会」は半官半民のところもありましたが、現職の「協議会」は民間の団体です。手持ち弁当的なところでみんなで頑張っていこうというところです。それを支援していくのが私のミッションだと思っています。

■ 今の生活に満足していますか?

そうですね。自分がこれまで培ってきたものが活かせているという実感があります。これまでの経験や人脈を活かせている。小さな組織なので、総務・広報・研修の仕事を全部やっている感じです。(笑)

■ 後輩にアドバイスするとしたら?

私は熊本出身ですが、結婚もせずひとりで頑張ってきました。60歳になって「定年」という感じでもない。ひとりだからこそ自分の居場所が大事でした。故郷の熊本に戻るという選択肢は今のところありません。やれるうちはやりたい仕事があればやりたいと思っています。

これからのことを考えると老後資金を貯めることは大事ですが、ある程度サラリーマンとして勤めていれば、将来そんなに困ることはないはずです。それよりも、どうやって生きていくか、将来にどう備えていくかが大切です。

備えとは「人とのつながり」、仕事だけでなく人とのつながりを大切にしていくこと。それがないと、特に女性がひとりで生きていくのは大変です。

■ 今後の展望についてお聞かせください。

「老後2000万円問題」が騒がれましたが、年金は老後資金の礎、加入者・受給者の老後の生活を支えるものです。

企業年金があるのは全企業の中の4割ですごく価値があり重要な役割をもっています。だからこそ、時代の変化に合わせて変えていくことが大事で、実務を知っている人が提言していくことが大事です。

こういう仕事に携わっている者として、少しでも役に立てるように努めていくこと。それが私がこれまでの経験を活かすことに繋がると思っています。

これからも、企業年金連絡協議会で働く女性たちも含めてセミナーや勉強会を実施したり、キャリアアップを支援していきたいと思っています。

■ 最後に、働くということは貴女にとってどういう意味を持っていますか?なぜ、働いているのでしょうか?

一言で言うと、明日生きるために働いているのだと思います。「働く」とは「明日を生きること」なのだと。

健康で働けることは有難いことです。明日仕事があることが活力につながります。結果として社会の役に立てている。働いているからこそ、社会とのつながりが持てるのだと思います。

企業年金連絡協議会のWebサイトはこちら
https://www.cpnweb.net/

■ 編集後記

企業年金というサラリーマンにとっては定年後の生活を支える重要なしくみに長年携わってこられた太田さんは、事務局長という威圧的な肩書きを少しも感じさせず、それでいて、ご自分の仕事に誇りを持っていらっしゃるのがお話しさせていただいて伝わってきました。「働くことは明日を生きること!」ときっぱりとおっしゃった太田さん。それが結果として社会の役に立てているんだというお言葉が印象的でした。(2019年10月3日)