「やりたいことは、今やる!」41年の会社員生活を経て、ヨーロッパ玩具の販売員へ

先輩インタビュー:0019 転職:ヨーロッパ玩具の販売員
有馬 由佳(ありま ゆか)さん
NextStoryセカンドキャリア研修第6期受講生
■ 今は何をしてらっしゃいますか? 現在のお仕事を教えてください。
現在は百貨店でヨーロッパ製の木のおもちゃや手作りぬいぐるみなどを販売しています。週3回、20時間以内の勤務ですが、毎回新しい出会いや発見があって、仕事の日が待ち遠しいくらいです。
お客様は小さなお子さん連れのご家族から、孫へのプレゼントを探しに来たおばあさままでさまざま。お子さんと一緒におもちゃを触って遊んだり、お孫さんの成長を嬉しそうに話される姿を伺ったり…。そんなやり取りの中で、まるでカウンセラーのようにお話を引き出す場面もあります。
「今日は来てよかった」と言われると、商品を買っていただく以上にうれしい気持ちになります。お金をいただきながら、こんなに楽しい仕事ができるなんて…と、日々感謝しています。
■ 前職ではどんなお仕事をされていましたか?
社会人のスタートは食品商社の経理担当。ですが、「もっとパソコンを学びたい」と思い立ち、マイクロソフトのオフィシャルトレーナー資格を取得してIT企業に転職しました。そこではパソコンインストラクターとして全国を飛び回り、数多くの受講者に指導。
36歳で出産し、事務職に移りましたが、やはり「新しいことを学びたい」という気持ちは止まらず、44歳でキャリアカウンセラー資格を取得。そこからは従業員満足度向上や事業推進室での業務に携わり、社内外の人との関わりを大切にしてきました。
■ 前職を辞めたのはいつですか?
2024年3月、61歳で会社員生活を卒業しました。定年後の1年間は再雇用として勤務し、その間にさまざまな活動に挑戦。自費出版も行い、会社員時代には経験しなかったことを一つひとつ実現しました。
■ なぜ、今の道を選んだのでしょうか?
41年間働き続けて、「もう十分やりきった」と思えたことが大きな理由です。さらに、主人を亡くした経験から、「やりたいことは健康なうちにやろう」という想いが強まりました。
昔から接客が好きで、実はディズニーキャストになる夢も持っていました。舞浜まで片道2時間半かかる距離やタイミングの関係でまだ実現していませんが、その思いは消えていません。
そんな中、ハローワークで偶然見つけたのがヨーロッパ玩具の販売職。「ただのおもちゃ屋さんではなく、木のおもちゃや手作りぬいぐるみなど、ちょっと特別な商品を扱うお店」に魅力を感じ、「これはご縁だ」と応募。今に至ります。
■ 収入に不安はありませんでしたか?
もちろん不安はありました。主人もいない、母も高齢、娘もまだサポートが必要…。でも Next Storyのセカンドキャリア研修に参加してキャッシュフロー表を作り、企業年金や個人年金、貯蓄の見通しを整理したら、「意外と大丈夫かもしれない」と思えました。
数字を「書き出す」ことの大切さを実感しました。特に長年企業に勤めていた方は企業年金がしっかりしているケースも多く、一度試算してみることをおすすめします。
■ セカンドキャリアを考えて、そのための準備を何か始められましたか?
40代後半にキャリアカウンセラー資格を取得した頃から、「この先どうするか」を意識し始めました。55歳の早期退職募集をきっかけに本格的な情報収集を開始。
準備といっても、難しいことではありません。「やりたい」と思ったらすぐ動くことを大事にし、着付け、英会話、スナックのママ体験、アイシングクッキー、タロット、投資セミナーなど、面白そうと思ったことは片っ端から挑戦。やってみて合わなかったものもありますが、その経験自体が楽しく、自分を知るきっかけになりました。
■ これまでに試行錯誤や苦労した時はありましたか? 今、抱えている問題などあれば教えてください。
一番は母の介護との両立です。あとは、多くの活動に手を広げすぎていること。現役時代より忙しくて、私のスケジュール帳はもう毎日真っ黒っていう感じなんです。
また、アイシングクッキー販売に挑戦したい気持ちはあるものの、「お金をいただくこと」への心理的な抵抗があり、そこをどう乗り越えるかが課題です。開業届や食品衛生責任者の資格も取得しましたが、まだ一歩を踏み出せずにいます。
■ 今の生活に満足されていますか?
キャリア理論では60代は「下降期」と言われますが、役割がなくて下降なの?ってちょっとすごいショックを受けたことがあって、でも、私はむしろ新しい楽しみを増やす時期だと捉えています。
よく考えてみると、この41年間私は仕事ばっかりしてきて、余暇を楽しむっていうことをしてこなかったんですね。 だから60才からは、余暇を楽しむ人を一生懸命やろう!って思い切ることにし、今は余暇を楽しむことを楽しんでるという感じ。そういう意味では本当に満足をしています。
■ 後輩にアドバイスするとしたら?
「選べること」自体が幸せです。どの道を選んでも、振り返れば必ず意味があります。迷ったらまず動いてみること。また、やりたいことは小さなことでもメモに残すのがおすすめです。私は「やりたいこと100」のアプリに、思いつくたびに書き留め、実行したら消すようにしています。今のところ半分ぐらいは達成できたかな。 本当に小さなことでもいいんです。どこどこのお店のモンブランを食べるみたいな・・・
■ 今後の展望についてお聞かせください。
アイシングクッキー販売や写経、お寺巡りなどに挑戦したいです。ディズニーキャストの夢も継続中で、お声がかかればいつでも行けるように準備しています。夢や目標は、いくつになっても持ち続けたいですね。
■ 最後に、働くということは貴女にとってどういう意味を持っていますか?
なぜ、働いているのでしょうか?
会社員時代は「できることをしてお金をもらう」感覚でしたが、今は「お金をいただいて好きなことをさせてもらっている」感覚です。お客様の笑顔や感謝の言葉が、この上ない報酬になっています。
そして何より、今は「自分で選んだ道」で働いていることが、日々の充実感につながっています。
■ 編集後記
41年の会社員生活を経て、新しい人生を歩み始めた有馬さん。
「やりたいことは、今やる」。その言葉通り、行動力と好奇心でセカンドキャリアを楽しむ姿は、多くの人に勇気を与えています。
(2025年8月8日オンラインにて)