レジリエンスは心の筋肉(前編)
今まさに、仕事がAI(人工知能)やロボットに置き換わる第四次産業革命がおこっています。
時代の転換期には、先行きが見えない不安や戸惑いがあり、新しいビジネスを創造するにも失敗や試練がある、現代はストレス時代ともいえます。そして、これからは人生100年時代。仕事だけでなく健康で幸せな人生を送るために、自分の感情を前向きにもっていける「レジリエンス」が必要とされています。
レジリエンスは、回復力、柔軟性、粘り強さなどの意味があり、ポジティブ心理学で研究されています。わかりやすく言うと、強くてしなやかな「心の筋肉」です。
■ レジリエンスは心の筋肉
食事や運動、睡眠など健康的な生活習慣で、病気になりにくい丈夫な身体が作られますが、心も同じで、落ち込みを引きずらない、怒りの気持ちをコントロールできる、未来に希望を感じられるなど、気持ちを良い状態に保つ習慣が必要です。「自分は大丈夫」と思えれば、何があっても前向きに考え行動することができます。
落ち込んでも回復できる心の筋肉、気持ちに弾力性があると、失敗や挫折でへこんだ経験を利用して、成長することもできます。不安や気分の低下で行動しないのではなく、目標に向かって積極的に行動し、人と関わり、良い関係を築いていけるほうが、手にする成果も大きくなります。
レジリエンスは心の筋肉です。
気持ちが下がった時だけでなく、もう一つ上の段階に気持ちを上げたいときにも、心の筋肉があれば、自分でよい方向に変えることができます。
身体の筋肉が運動によって維持できるように、心の筋肉も日々のトレーニングが必要です。ストレスを感じた時やモチベーションを上げたい時の気持ちの切り替えは、心の筋トレです。習慣になると、「レジリエンス」が身につきます。
弱くてかたい筋肉より、しなやかで柔らかい筋肉のほうが、機敏に動いてもケガを防ぎ、長時間のパフォーマンスが保てます。心の筋肉も柔軟でしなやかなほうがレジリエンスです。
これまでに、世界中のポジティブ心理学や脳科学の専門家の研究成果をもとに、心の筋トレ=レジリエンスを4つの行動(Stop, Change, Go, Up)にまとめてみました。
■ ストレスの原因となるネガティブ感情を手放す(Stop)
ネガティブ感情は、生きるために必要な行動を引き起こしています。
例えば、 怒り→戦う、恐怖→逃げる、不安→警戒する といったふうに、太古の昔から、ネガティブ感情によって危険から命を守ることができました。
ところが、現代ではネガティブ感情は「大切なもの」を伝えるためにおこることが多くなっています。「プライド」が傷つけられた→怒り、「目標」が達成できなかった→くやしい、「正しいこと」をしなかった→後悔 など。自分が大切にしている価値観や対象が、好ましくない状態になった時に、ネガティブ感情がわき上がります。
なぜ、そのような気分になるか、原因がわかると、次におこすべき行動を考えることができます。ネガティブ感情の意味知って手放すことで、ストレスを溜めにくい状態になれます。
起きた出来事をくよくよと思いつづけるより、先の行動に目を向ける気持ちの切り替えで心の筋肉が鍛えられます。
今、自分がすべきことに集中することも大切です。
「過去と他人は変えられない」「変えられるのは自分と未来」といいますが、自分ではどうにもならないことを切り離し、自分の課題に専念することで、ストレスを軽くします。他人を変えることはできなくても、自分を変えることはできます。
とは言っても世の中、理不尽なこともおこりますので、ストレス解消も必要です。
他にもユーモアを使うのもおススメです。この経験をネタにして笑ってみる。
疲労はストレスになるので、休養や睡眠、栄養を十分とって、その日のネガティブ感情を翌日に持ち越さない工夫も習慣にしたいです。
ポイント:
- ネガティブ感情の意味を考える
- 自分の課題に専念する
- ストレス解消・疲労回復をこころがける
いかがですか?これらを何度も繰り返していくうちに、役に立たないネガティブ感情が楽に手放せる心の筋肉が鍛えられます。この続きは後編で。
※関連記事 レジリエンスは心の筋肉(後編)
筆者紹介:
株式会社深谷レジリエンス研究所 代表・レジリエンスコーチ 深谷純子
日本アイ・ビー・エムでのSE経験を経て50代で独立。
挫折や失敗を経験しても立ち直り成長できる人に興味を持ちレジリエンスに出会う。心理学や脳科学、コーチングを学び、高校生から社会人までを対象とした研修やワークショップを全国で展開中。
著書:ひきずらない技術(あさ出版、2017)
ポジティブ心理学公認ファシリテーター、国際コーチ連盟アソシエイツ認定コーチ
株式会社深谷レジリエンス研究所HP はこちら https://www.fukayaresilience.com/