マチュアな女性
最近、馬遅伯昌(ま・ち・はくしょう)という中国人の料理研究家の方のエッセイ集「食べものが命をつなぐ」(マガジンハウス)をいただいたので読んでみました。著者の馬さんは、なんと101歳というご高齢の方。でも、アイロンのきいたおしゃれなシャツで背筋をシャンと伸ばしリビングの椅子に脚を組んで座る姿はとても101歳には見えない若々しさで、なんと、毎朝起きたらすぐに身だしなみとしてイヤリングをするのが日課なのだそうです。(ちなみに昔の中国では、結婚したら女性はイヤリングをする風習があり、未婚の女性や未亡人はイヤリングをしてはいけなかったとありました)
その本には食を中心に健康で幸せな生活について、料理研究家としての馬さんの思いがつづられていましたが、表紙の裏にこんな一文がありました。
「年をとって困ったなと思ったことは、まったくありません。
昔より成長したところを感じていきたいのです。
私は”老いた”のではなく、”成熟”しただけです。」
私はここ数年ずっと「マチュア世代」という言葉を気に入って使ってきました。「マチュア」というのは日本語にすると「成熟した」とか「大人の」という意味で、「マチュア世代」は50代くらいを指すことが多いようですが、私の中の定義では40代後半から60代くらいをイメージしています。
他人に流されずに凛として自分の人生を受け入れ、「自分」の意見をしっかりもっているエレガントで素敵な女性が、私にとっての理想の「マチュア」な女性ですが、今の世の中60歳くらいでは、まだまだその域に達するのは難しく、正直言って40代後半から60代前半までの20年くらいは「マチュア」の入り口かもしれません。
最近、高齢の素敵な女性を見かけるたびに、私はまだまだだな~と思います。
世の中一般的には65歳以上が「高齢者」として定義され、さらに日本では65~74歳を「前期高齢者」、75歳以上を「後期高齢者」と区分しているケースが多いようですが、「高齢者」という響きからイメージされるのは75歳以上の、いわゆる「後期高齢者」の方たち。「前期高齢者」はまだまだ元気で、「高齢者」という名称を考え直した方がいい気がします。
厚生労働省の発表によると昨年(平成30年度)9月の時点で 総人口が前年より27万人減少する一方、高齢者は44万人増加して3,557万人(総人口比28.1%)、特に女性の高齢者人口が初めて2000万人を超えたそうです。 (約2,012万人)
さらに、住民基本台帳に基づく100歳以上の高齢者の総数は69,785人、このうち女性は全体の88%、61,454人だそうです。(厚生労働省 平成30年9月14日 Press Releaseより)ほぼ9割が女性と言えそうですね。
でも、このうち、どれだけの女性が馬さんのように自宅で普通の生活を送り、かつ社会と繋がっているでしょうか。健康に留意して日々背筋を伸ばして暮らしていくことが本当に大事だと思います。そして馬さんのように、毎日ちょっとでも精神的に成長したと感じることができたらと思います。
「少女」から「若い女性」になり、いつの間にか「おばさん」になって「おばあさん」になる女性の一生のうちで、成熟した「大人の女性」でいられる期間はどのくらいあるのかと思うと、「老いて、わけがわからなくなる」前に、本当の「マチュアな女性」になりたいものです。
人生100年時代、まだまだ時間はあるようで、ぼ~と生きていると、あっという間に時間が過ぎてしまう気もします。